進む「少子化」。激化する「ランドセル商戦」。

「少子化」。誰もが一度は、ニュースや新聞などでこの言葉を目にしたことがあると思います。
今、日本は間違いなく少子化の道を進んでいます。厚生労働省が23日発表した2015年の人口動態統計によると、１人の女性が生涯に何人の子どもを産むのかを推計した合計特殊出生率は1.46。2016年4月1日時点での、子供の割合は12.6%。これらの数字は諸外国と比べても最も低く、日本の少子化がいかに深刻な問題か分かると思います。
ただ、近年は少子化にも関わらず、ランドセル市場が伸び続けていると言います。そればかりか、ランドセル販売商戦は年々激化し、購入時期も早まり、注目度はどんどん増しています。
ではなぜ、昔からあったはずのランドセルが、今になってこんなに注目されているのでしょうか？

ランドセルの高級化

「日本鞄協会ランドセル工業会」によると、平成2年のランドセルの購入価格相場はおよそ33,000円。そこから2010年くらいまでは、多少の上下はあるものの、35,000円程度で推移しています。しかし、2010年ごろをさかいに、ランドセルの値段は急激に上昇。2014年には42,400円まで平均価格が上昇しています。

※「一般社団法人　日本鞄協会　ランドセル工業会HP」参照

外食産業などが低価格志向にシフトしている中、ランドセルは購入価格が高まっているのはなぜなのか。

それは、単に物価の上昇、原価の高騰ということも考えられますが、それだけではないと思います。そこには、一生に一度だから良いものを買ってあげたいと思う親の気持ちが反映されているはずです。

例えば、毎日使うトイレットペーパーなら、1円でも安く買おうと頑張ると思います。では、成人式の振袖だったら？結婚式のウェディングドレスだったら？「一生に一度」と思えば、いつもより財布のひもが緩くなるのは当然のことです。そこで、ランドセルに関して言えば、値段を少しぐらい上げても市場が成り立ってしまいます。親世代ではなく、祖父母世代が孫のためにと、高価なランドセルを購入することも多いようです。ランドセルを製造するメーカーもそれを理解し、より高品質なものを作ろうという動きに変わってきたということです。

ランドセルの購入時期は年々早まっている

ランドセルの販売ピーク時期ってご存知ですか。
入学前に買うから1~2月くらい？早まってるって聞くからクリスマス前くらいかな？
実は、現在の販売ピークは大体8月前後と言われています。夏真っ盛りです。

2009年ごろまでは販売ピークが大体1月くらいでしたが、そこから毎年1ヶ月程度ピーク時期が早まってきています。2大手メーカーの人気商品は、早めに購入しないとすぐ売り切れてしまいます。売り手も買い手もそれを分かっているため、なるべく早く売り、なるべく早く購入するようになりました。
また、ランドセルは一度買ってしまえば、その年に二度目の購入は、ほぼない商品です。基本は、一家族、一ランドセルなので、メーカー側も早くからCMを始め、少しでも早く自社製品に目を向けてもらおうという努力をします。ランドセルに注目が集まれば集まるほど、ランドセル競争は激化し、購入時期のピークも早まっていくということです。

メーカー直営店が続々とオープンしている

ランドセルは6年間使うものです。その子にとっては一生に一回の買い物なので、後悔のないランドセル選びをしてもらいたいと思うのは親として当然のことです。
そこで、ランドセルをどう選んでいいか分からないという親御さんを少しでも助けてあげたいという想いから、ランドセルメーカー直営店が各地に続々とオープンしています。

例えば、業界最大手「天使のはね」でお馴染みのセイバンは2014年5月、おしゃれで可愛いメーカー直営店を表参道にオープン。若者の流行の最先端を行く街に、ランドセル専門のオシャレなショールームが店を構えたのです。工房系のランドセルで長年人気を誇っている土屋鞄も北は仙台から南は福岡まで、全国各地にオシャレで温もりのある、思わず入りたくなるような販売店を続々とオープンさせています。

こうしたランドセル販売店が「ランドセル＝単なる小学生の通学鞄」というイメージからの脱却を図っていることは少なからずあると考えます。

個性的なランドセルが毎年登場している

ランドセルと言えば、男の子は黒、女の子は赤、そして基本は無地でなるべく目立たないもの、という考えが、かつては一般的でした。確かにその考えは今でもあります。ただ、昔に比べてランドセルにも個性を出していこうという考えも広まってきています。それは単なる見た目のユニークさだけでなく、機能性やブランドという領域も含めての話です。

例えば、2017年7月15日には、ディーゼル キッズ(DIESEL KID)から日本限定のオリジナルランドセルが登場しています。ディーゼルの日本ローンチ30周年を記念して製作されたオリジナルランドセルで、限定100個販売されました。上質なヌメ革を使用し、表面にはランダムにスタッズがついたロック風のデザインが特徴です。

また、2017年の新作ランドセルで話題になったのが、高級車レクサスから発表された15万円の超高級ランドセル。ランドセルには、レクサスのスポーツカー「LFA」のカーボン繊維と同じ素材を使用し、軽量で丈夫。かっこいい見た目と共に機能性も抜群です。
その他にはソラシドエアとフィットちゃんがコラボしたランドセルというものも2017年の夏に発表されています。

このようにランドセルメーカーでないブランドも、ランドセルに注目し、一昔前では考えられないようなオリジナルランドセルを作っているのです。各メーカーも他社との差別化を図るため、バラエティ豊かなランドセルを次々と販売するようになりました。

海外からも注目されるランドセル

海外にも通学カバンはありますが、あのフォルムの、いわゆる”ランドセル”は日本だけのものです。その歴史は明治時代にさかのぼります。
日本独自のランドセルですが、現在海外からも注目されています。日本に来た外国人はお土産としてランドセルを買い、欧米の大人たちは、ファッションとしてランドセルを利用しています。デザイン性があり、ファッショナブルなランドセルは大人が見ても魅力的に見えるのでしょう。日本で大人が背負うのには相当敷居が高いですが…。
子供の数は減ってきているのに、なぜか盛り上がりを見せるランドセル業界。
そこにはランドセルメーカーさんの努力と人々の意識の変化が現れているに違いありません。